日本の農業問題
日本の農業問題
日本の農業は、危機的状況を迎えています。食料の国内自給問題、農作物の価格不安定、国際競争力不足、ダイオキシン等を含む消毒剤や除草剤投下による土壌汚染、それら汚染水による水質温泉など環境問題などを抱えています。日本の農業問題の外部要因を解説します。
①国内食料自給率と国際競争力が低下
日本の食料自給率は40%台です。世界人口が急激に増える情勢下において、日本の国際影響力は下がっている日本。食料の6割を輸入に頼る日本は、食料確保が課題になっていきます。
②食の多様化とお米消費量の減少
国民一人当たりのお米消費量は60kg前後で、1970年の半分にまで減少しています。これは、現代人が食事をとらなくなったわけでなく、豊かな国になるにつれ、食の多様化が進んだことが主な要因です。パンの定着、お肉を中心とした食生活への変化が起こりました。パンの主原料である小麦は国内自給率が低く、お肉にはエサを輸入に頼っているからです。
③下がり続ける米価「コメ作ってメシ食えない」お米農家
お米農家が農協などにお米を販売した場合の手取り額(これを「仮渡し金」といいます)は、1俵60kgで10,000円〜14,000円となっています。この仮渡し金は、年々下がって(安くなって)います。60kgで12,000円と仮定しても1kgで200円。500グラムでは100円です。1年かけて農家が愛情かけて育てたお米が、ミネラルウォーターより安いのです。一方で、生産に必要なコストは減少傾向とはいえ、全国平均で14,190円(平成21年農業経営統計調査より計算)。このうち労働費は全体の30.8%で1俵(60kg)当たり4,370円。つまり、1俵(60kg)のお米を売ると、最大で7,190円も赤字になる計算になる。これで生計が成り立つわけがない。しかし、これが日本の農業の現実です。
④実質の米価変化率は、マイナス300%以上
現代は赤字のお米だが、昔から赤字だったかと言えば、そんなことはない。
昔は物価が安かったから、お米は儲かっていたんです。実質的な米価の変化を知るには、物価指数を考慮しなければなりません。平成21年の仮渡し金は9,000〜14,000円であり、1987年の17,400円の最大で半値となっています。物価上昇率を加味すると、米価の実質的な下落は以下の図となります。消費者物価指数(青の棒グラフ)は上昇していますが、米価(赤の棒グラフ)は昭和60年を境に下落しています。高度経済成長などもあり日本の物価は上がりました。食べ物・洋服などの生活物資は軒並み上昇しましたが、その中で唯一、下落している穀物が「お米」なんです。実質の米価変化率は-301.1%にも及びます。
⑤魅力のない農業が招いた問題
ビジネスとして農業をみた場合、魅力があると思う人はほぼ居ないでしょう。この魅力のない農業では、農業従事者の高齢化による人手と担い手不足、生産性の低い地域では耕作放棄地(田んぼや畑として使っていたが現在は使っていない農地)の拡大などの問題が、近年になって問題視されてきました。国土が狭い日本。日本の耕作放棄地の総面積は、埼玉県と同じ広さにも達しています。これでは「食料自給率を高めよう」となっても、作る田んぼも畑もない。現状維持どころか、使える田んぼも畑もどんどん狭く、小さくなっている現状なんです。
⑥2020年代に、お米を作る農家が居なくなる!?
お米生産世帯人口は統計上、2020年代にゼロになる。日本でお米を生産する人は居なくなる。ということです。実際に居なくなることはないとは思いますが、加速度的に減少の一途を続けています。農地もどんどん少なくなって、農業をやる人もどんどん減っていく。これでは国内自給率を高めるどころか、生産する体制自体が崩れているのが現状なんです。
⑦問題は山積み。最大の要因は内部的な要因かもしれない。
農業問題はひとつでなく、あれも・これも問題と言ってよいでしょう。これまでは、外部的な要因と、外部要因による結果の問題について解説してきましたが、一番大きいのは内部的な要因かもしれない。
それは農業自体が、産業ではなく生活となっていることです。
“Rice is Life”という言葉がかつてあったように、生産現場において農業(特に米作り)とはライフワークそのものなのです。これが諸問題解決の糸口を見いだせない、一番の要因なのかもしれません。